2025 年9月17日に開催された第14分科会の第4回勉強会では、アルサーガパートナーズ株式会社でコンサルタントとして活躍されている渡部智也さんが登壇されました。今回のテーマは「データアーキテクチャ」―DMBOKの知識領域の中でも特に抽象度が高く、「わかったようでよくわからない」領域とされるテーマです。約20名が集まり、参加者全体でデータアーキテクチャとは何かを解釈し、問い直し、咀嚼していくという、第14 分科会らしい“共に考える学びの場”となりました。
データアーキテクチャとは「全体最適」を描く設計思想
発表の冒頭では、DMBOKが定める11の知識領域の中における「データアーキテクチャ」の役割が紹介されました。データアーキテクチャとは、他の知識領域、すなわちデータモデリング、メタデータ、データ品質、マスターデータ管理などを下支えする“土台”となる構造的な設計思想であり、組織全体のデータ整合性を支える基盤であることを強調されていました。その後、渡部さんがDMBOKに書かれた定義を自分なりに読み解きながら、以下のような気づきがあったことを紹介しました。
- データアーキテクチャは「あるべき姿」を描くこと。理想(To-Be)を定義し、段階的にそこへ近づけていくための起点になる。
- 個別最適ではなく全体最適を志向するという視点が重要である。データ設計やシステム開発などにおいて、俯瞰的な視座がなければ局所最適に陥る危険性がある。
- データアーキテクチャは、単なる「システム構成図」ではなく、「なぜこの構造にしたのか?」を言語化できる“設計思考”である。
今回の発表では、渡部さんがDMBOKのデータアーキテクチャの内容に初めて触れ、自分なりに咀嚼しながら理解を深めていったとのこと。こうして咀嚼された言葉だからこそ、他の参加者にとっても理解を深めることができ、次章で紹介する様々な質問や意見交換に繋がったのでしょう。


参加者同士での質疑応答・意見交換
発表後の質疑応答では、実務に即した視点から多くの問いが投げかけられ、参加者間での議論が深まりました。
- データアーキテクチャという言葉のズレに注意を
ある参加者から「現場では、データアーキテクチャ設計よりも、セキュリティ設計のほうが先に出てくることが多い」という声がありましたが、これは“データアーキテクチャ”という言葉が異なる文脈で使われていることに起因するとの整理がなされました。たとえば、DWHや分析基盤など、情報系システムの構築においては「データアーキテクチャ」はシステム構成やIT技術に関連した内容を指すことが多く、その中でセキュリティ要件が重要視されることもあるかもしれません。一方で、DMBOKの文脈における「データアーキテクチャ」は、企業全体にまたがる情報構造の設計を意味するため、データセキュリティに関連する検討は、なされないことが多い印象です。対象とするレイヤーがまったく異なるため、用語の定義や文脈の違いを明らかにしたうえで議論を行う必要があるという点が参加者間でも共通認識として確認されました。 - To-Be 像としてのエンタープライズデータモデルをどう扱うか?
「理想的なデータアーキテクチャを描いても、すぐにその構造を実現することは難しいのでは?」という問いも挙がりました。これに対しては、設計を「すぐに実現すべき完成形」と捉えるのではなく、To-Be像としてのエンタープライズデータモデルを掲げ、そこに向けて段階的に整えていくための指針として活用するというアプローチが共有されました。特にERP導入や基幹システム刷新といった場面では、まず目指すべき構造を描いたうえで、業務・データ・システムを順次それに合わせて調整していく長期的な視点が重要になることが確認されました。 - 生成AIや非構造データの扱いについて
近年話題となっている生成AIや、ログ、文書などの非構造データについても話題が及びました。「そうした情報はアーキテクチャ設計の対象に含まれるのか?」という問いに対しては、データアーキテクチャの対象は構造化データに限られない、という結論に至りました。具体的には、画像やドキュメントなども、“情報”として活用される、かつAI Readyという観点からも、設計段階で考慮に入れる必要があるという認識が共有され、データアーキテクチャが扱う範囲の広がりを再認識しました。
おわりに
今回の勉強会では、「データアーキテクチャとは何か?」という基本的な問いに対して、DMBOKを出発点にしながらも、実務や言葉のズレ、将来的な設計対象の拡張まで含めた幅広い対話が行われました。また、発表者である渡部さんご自身が初めてのこのテーマを学んだ上でのご発表であったことも、この勉強会の意義を象徴しています。第14分科会は、こうした「初学者が言語化し、発表し、対話を通じて理解を深める」ための場として設計されており、それが今回も機能した形となりました。
次回のテーマは「データモデリング」。データアーキテクチャの一つとして作成するデータモデルとは何なのか、作成するメリットとは何かなど、引き続き基礎からデータマネジメントの理解を深めていきます。
※スライドの掲載については、発表者ご本人の了承を得ております。

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