2025 年8月26日に開催された第14分科会の第3回勉強会では、株式会社パタンナー代表の深野嗣さんが登壇されました。今回のテーマは「データマネジメント基礎とセルフデータマネジメント」。
約20名の参加者が集まり、自己紹介や近況の共有を経て、深野さんのご自身の実務経験に基づいた熱量ある発表が行われました。以下、その要点をまとめます。
データマネジメントとは
まずはDMBOKに立ち戻り、「データマネジメントとは何か」を確認するところから始まりました。定義では「データとインフォメーションという資産の価値を提供し、管理し、守り、高めること」とされています。深野さんはここで、「多くの人が欲しいと思う状態にデータを整えること」がデータマネジメントのゴールではないかと整理。単なる“管理”ではなく、価値を引き出す営みであることを強調されていました。

そもそも“マネジメント”とは?
次に、ピーター・ドラッカーの『現代の経営』を引き合いに、マネジメントの本質に触れました。
- トップがすべてを決めるスタイル
- 他の人に仕事を任せるスタイル
この二つの型がありますが、データマネジメントは圧倒的に「任せる仕組み」が必要な領域だと指摘。なぜならデータ管理の仕事量は一人で担いきれず、組織や利用者を巻き込まなければ現実的に回らないからです。

セルフサービス化の歴史と潮流
深野さんは、セルフサービス化の歴史をクラウドやBIツールの普及から辿りました。
- 昔は数ヶ月待たなければ使えなかったサーバーが、クラウドでワンクリックに
- 専門部署に依頼して数週間待っていた分析が、TableauやPower BIで現場でも可能に
そして現在は生成AIがその流れをさらに加速させ、誰でも自然言語で高度な分析ができるようになっています。この延長線上に「セルフデータマネジメント」があり、データ管理も専門家だけでなく現場で自然に行われるようになる必然性を示されました。

なぜセルフ化が必要なのか
セルフ化の必要性を裏付けるのは、実務で直面する課題です。
- 人材よりもデータの増加スピードが速い
- 職種ごとに必要なメタデータが違う
- 知識が分散しており、使った人しか気づかない情報がある
こうした現実を前に、「管理者がすべてを整備するのは不可能」と深野さん。だからこそ、利用者自身が気づいた時に情報を付け加えられる仕組みが必要であり、データマネジメントのチームはルール作りや全体監督に集中すべきだと語られました。

教師と生徒にたとえるデータマネジメント
わかりやすい比喩として「教師と生徒」が紹介されました。教師が生徒を管理するのは、社会で活躍できる人材になってほしいから。同じように、データを管理するのは、活用されるデータ=資産に育てるためです。そのプロセスは「把握→理解→育成→活用→監視」の5ステップで整理できるとのこと。DMBOKをいきなり現場に落とし込むのは難しいですが、こうした身近なたとえを使うと、実務のステップとしてイメージしやすくなります。

セルフデータマネジメントメソッド
最後に紹介されたのは、深野さんが自社プロダクト開発と実務経験から組み立てた「セルフデータマネジメントメソッド」。
- ガバナンスのために必須の情報は管理者が責任を持つ
- それ以外の「使いやすくする工夫」は利用者がセルフで付与
- KPIで進捗を「数値で語る」仕組みを導入
また、データ属性ごとに必要なナレッジを整理する「XY別データナレッジ管理」など、具体的な実装の工夫も披露されました。「データ管理はゴールのない営みだからこそ、仕組みで分担し、数字で進めることが大切」というメッセージが印象的でした。

質疑応答から見えた論点
後半の質疑応答では、実務者ならではのリアルなテーマが掘り下げられました。
- Q. 価値をどう伝えるか?
A. データマネジメントは直接売上に結びつかないため、トップ層の理解と決裁が不可欠。導入企業は「必要性を最初から信じている」ケースが多いのが現実とのこと。 - Q. セルフ化とカオス化のバランスは?
A. 「自由にやらせると散らかるのでは?」という懸念に対しては、公式メタデータ(ガバナンス情報)とユーザー付与メタデータ(タグなど)を分けて管理するアプローチが紹介されました。口コミ的な自由度と公式性をバランスさせる工夫です。 - Q. 承認を得にくい現場ではどうするか?
A. SIer やデータ連携の現場から「基盤整備は予算化されるが、データマネジメントは後回しになりやすい」という声も。これに対し、「基盤を作ってもゴミ山になっては意味がない」という現実を伝え、基盤とマネジメントはセットであると訴えることが重要だと議論されました。 - Q. セルフ化の実践的な境界線は?
A. 「どこまで任せ、どこから管理者が責任を持つのか」という問いには、個人情報や品質に関わる部分は厳格に管理し、それ以外は利用者に委ねる二層構造が望ましい、との具体的な回答がありました。
参加者からもSIer、メディア、金融、製造など多様な立場での問題意識が共有され、発表を超えて「自分の現場でどう応用できるか」を考える時間になりました。
おわりに
今回の勉強会は、データマネジメントを「管理のための管理」と捉えるのではなく、資産に育てるための仕組みづくりと捉えることの重要性を改めて感じさせてくれる内容でした。次回の第4回は「全社のデータアーキテクチャ」がテーマ。引き続き、基礎から応用へと学びを深めていく場となりそうです。
※スライドの掲載については、発表者ご本人の了承を得ております。


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