「デジタル化」で改革ができるか?

9月1日にデジタル庁が発足され、平井卓也デジタル相の会見はじめ、華々しくメディアでも取り上げられています。
報道のされ方含めて、誰もが「徹底的にデジタル化を進める」と繰り返していますが、この認識に私は大いに違和感を覚えます。

アナログ(紙)のデジタル化(電子化)についていえば、職員のExcelだろうが、多額な国家予算が投じられ、ほぼ使われていないような行政手続きシステムだろうが、既にデジタル化(電子化)されている状態になっているのです。
問題は今やデジタル化することではなく、各行政手続きごとに縦割りの状態で構築され、メインフレーム時代の古いアーキテクチャーを見直すことなく長年場当たり的な増改築が繰り返されてきたシステムの中で”データがサイロ化”し、意味や粒度、整合性が合わない状態で分断されていることが最大の問題なのです。
適切に管理されないままに増大化の一途を遂げるデータは、複数の「系」のシステムをまたがってつなぐことができないため、手続きのたびに本人確認や同じ情報の入力を強いられ、デジタル化(電子化)すればするほど、人手のかかる照合・確認対象のデータや利活用することができないデータがさらに無尽蔵に増えていくことを強く危惧しています。

デジタル化(電子化)という手段が今後も引き続き目的化し、新たな「器(システム)」の開発・導入が進んで濫立化することにより、その結果、使えないデータがさらに増えてしまう。
この悪循環を断ち切るためには、「器(システム)」ではなく、その「中身(データ)」と向き合い、これをいかに最短距離で整備すれば利活用できるようになるかを実地にアセスメントし、それを改善していくための地道な活動計画を策定・実行していくことに他なりません。
どうしても目に見えやすい「器」をどう作るかに衆目が集まりがちになりますが、その「中身」と真摯に向き合わないと、政府が標榜する「Once,Only原則(国民・事業者が役所に一度提出した情報を他の役所が二度と求めてはならない)」などは夢のまた夢になります。

データマネジメントの普及・啓発団体であるDAMA日本支部にとっても、私が事務局長を務める(一社)日本データマネジメント・コンソーシアム[JDMC]としても、こうした問題意識をもっと世に問い、情報発信していくことが重い責務なのではないかと、デジタル庁の一連の報道を見ていて再認識した次第です。

DAMA日本支部 企画担当理事
日本データマネジメント・コンソーシアム[JDMC] 発起人 兼 事務局長
大 西 浩 史

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