データマネジメントなき「デジタル庁」は”いつか来た道”

「デジタル庁」は救世主になるか?

長期に渡った安倍政権から菅首相にバトンが渡され、その政権の目玉政策として「デジタル庁」が注目を集めています。
デジタル、つまりはデータの存在が日本のビジネスパーソンだけでなく、一般の生活者や子どもたちにも広く耳目に触れるようになること自体は非常に良い傾向ではないかと感じますが、本当にお題目として謳われている行政サービスや国民の利便性の向上、既存規制の改革などに効果を発揮することができるのか?
その際に注意しなければならない点があることを私は指摘しておきたいと思います。

かつても「e-Japan構想」などのITによる行政改革の試みは多額の予算が投じられ、「政府エンタープライズ・アーキテクチャー(EA)」といった取り組みが何度も行われてきました。
ただ、それらがどのようなメリットをもたらしたというのか。
国民や民間事業者、行政職員の皆さんですら、そのメリットを実感できていないのではないでしょうか。

それはなぜかというと答えは簡単で、「電子化することが目的化した」という一点に尽きます。
既存の法令、制度、ルール、組織などを是として、そのままプロセスを電子化するだけでは帳票単位にシステムが濫立するだけです。
その帳票ごとにバラバラなデータが生み出され、活用できないばかりか、たとえば、住所変更の手続きを役所ごとに利用者に強いることになります。

デジタル庁においても「デジタル化すること」が目的になってしまえば、これまで何度も踏んでいた轍を踏み、無駄なプロセスを温存してデジタル化、要は電子化することに再度血道を上げることになるでしょう。
一時期ブームになった”オープンデータ”の政府の動きも「オープンデータ化すること」が目的化し、誰からも使われないオープンデータの数だけが競われ、価値あるデータの提供につながらない残念な結果に終わるでしょう。

データマネジメントを大前提とした「デジタル庁」に

では、真に行政サービスの向上や規制の改革などに資する「デジタル庁」にするためにはどうするか?
今度こそ、「データを中核に捉え、行政サービスのお客様である国民や民間事業者を主役としたデータマネジメントを、府省横断的に徹底すること」ではないかと思います。

これまで複雑に築き上げてしまった既存の巨大システムに存在するデータと向き合うには相当の困難を伴うことは間違いありませんが、ここにメスを入れない限り”いつか来た道”を通ることになることは必定です。
「デジタル庁の役割は行政データマネジメント」といった覚悟で取り組んでほしいと願います。

DAMA日本支部 企画担当理事
JDMC事務局長 兼 理事
株式会社リアライズ 代表取締役社長
大西 浩史

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