データ活用の成功を導く「データリーダーシップ」

今年の3月に、データマネジメントの国際カンファレンスEnterprise Data World(EDW)が実施された(https://edw2020.dataversity.net/)。今年のセッション毎のテーマを眺めてみると、「データリーダーシップ」をテーマとするセッションが多い。海外でもDXはキーワードとなっているが、それよりも上位である(下表、「EDWセッションの分類」を参照)。

データリーダーシップは組織の機能

そもそもデータリーダーシップとはなにか。
CDO(Chief Data Officer)のような社内のデータ責任者を思い浮かべる方もいるだろうが、そうした特定の人物は指していない。
データマネジメントとデータガバナンスのあるべき姿(ビジョン)や目的を明確にし、そこに至るステップを戦略として策定すること。
または、そうして策定されたビジョン・目的と戦略を見直すことが、データリーダーシップである。

DMBOK第2版でも、データマネジメントのリーダーシップについて述べている箇所がいくつかある。
第1章「データマネジメント」では、データマネジメントの原則として
「効果的なデータマネジメントにはリーダー(※原文では”leadership”)のコミットが必要(Effective data management requires leadership commitment)」
「管理スキルだけでなく、ビジョンや目的が必要」
と述べている (DMBOK 第2版日本語版 P46) 。
また、第17章「データマネジメントと組織の変革」では、米国の専門家ジョン・コッターのリーダーシップ論を紹介しながら、リーダーシップとは変革を実現するための能力で、合理的で魅力的な将来像であるビジョンを描き、どうしたらビジョンを達成できるかという筋道である戦略を作成することだと紹介している (DMBOK 第2版日本語版 P636 図117) 。

データの価値を収益・コスト・リスクで評価する

ビジョンと戦略を作成するだけなら既存の「データ戦略」(またはデータマネジメント戦略/データガバナンス戦略)となにが違うのか。

データリーダーシップの提唱者の一人、Anthony J. Algmin氏によれば、データの価値とはつまるところ収益の増加・コストの減少・リスクの管理の3つのどれかだと言う。

データの価値とは、「データを使い何をするのか」と「そのデータ無しで何ができるか」の差分によって具体化される。
収益の増加、コストの減少、リスクの管理によって価値は測定される
これら3つは、実際にデータの価値を生む「唯一の」方法である。

“Data Leadership: Stop Talking About Data and Start Making an Impact!” https://algmin.com/book/

データ戦略の目的は企業によって様々だが、究極的にはデータの価値によってビジネスに貢献することを目指す。
つまりAlgmin氏の上記意見に拠れば、データ戦略の目的とは収益の増加・コストの減少・リスク管理というビジネス視点で具体化・定量化されたものになる。
また彼は、こうして目的が定量化・具体化されれば、目的に対して現在どこまで達成できたのか測定し、問題点があれば特定して改善し続けることができるとも言っている。

すなわち「データリーダーシップ」とは、
・データ戦略の目的を、ビジネス視点で具体化・定量化する
・定量化された指標に基づき、戦略自体が定期的に評価され、見直される
のふたつを前提条件としている点が、通常の「データ戦略」との違いとして位置づけられる。

データリーダーシップで変化に対応し、無駄を省く

ではEDWに参加しているような海外の企業や組織は、目的の具体化・定量化とそれに基づく改善活動をどれだけ実施できているのか。
あまりできなくて悩んでいるからこそ、「データリーダーシップ」をテーマにしたセッションが増えているのではないだろうか。

たとえば、ビジネス環境が急速に変化して戦略自体を見直すべき状況になっていても、目的を定量化できていないので測定できず、変化に気づかないまま、もはや無駄かもしれない施策を継続する。また、施策実行の結果得られる収益を、そのために費やしたコストが上回っていても気づけない。そんな企業が多いのではないだろうか。

海外では、2010年代前半からデータ戦略の策定に取り組む企業が増えた。それから10年近く経つが、戦略立案と推進で成功したという事例は、それほど多くはない。
一方、日本は最近になってデータ戦略策定に取り組む企業が増えてきたところだ。
もし貴社もそうした企業なら、今からできるだけ目的の具体化・定量化に取り組んでみてはどうだろう。
目的の定義に時間がかかるかもしれないが、変化に対応し、無駄な作業を省くことで、最終的にはデータ活用成功の近道になるかもしれない。

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