デジタル・トランスフォメーション(DX)とは、デジタル(データ)とトランスフォメーション(変革)を組み合わせたものである。当然そこではデータ・マネジメント(DM)の要素がコアとなるはずだが、世の中そのようには理解されていないらしい。
ここではまず、2019年に経産省から発表されたDXレポート、DXガイドラインの内容について吟味してからDXとDMの関係に迫りたい。
DXレポート(2019年9月/57ページ)
~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~
- 検討の背景と議論のスコープ
- DXの推進に関する現状と課題
- DXを実行する上での経営戦略における現状と課題
- 既存システムの現状と課題
- ユーザ企業における経営層・各部門・人材等の課題
- ユーザ企業とベンダー企業との関係
- 情報サービス産業の抱える課題
- DXを推進しない場合の影響 (2025年の崖)
- 対応策の検討
- 「DX推進システムガイドライン」の策定
- 「見える化」指標、診断スキームの構築
- DX実現に向けたITシステム構築におけるコスト・リスク低減のための対応策
- ユーザ企業・ベンダー企業の目指すべき姿と双方の新たな関係
- DX人材の育成・確保
- ITシステム刷新の見通し明確化
- 今後の検討の方向性
- 終わりに
DX推進ガイドライン(2019年12月/10ページ)
- はじめに
- 『デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン』
1)DX推進のための経営のあり方、仕組み
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- 《経営戦略・ビジョンの提示》
- 《経営トップのコミットメント》
- 《DX推進のための体制整備》
- 《投資等の意思決定のあり方》
- 《DXにより実現すべきもの: スピーディーな変化への対応力》
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2)DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築
体制・仕組み
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- 《全社的なITシステムの構築のための体制》
- 《全社的なITシステムの構築に向けたガバナンス》
- 《事業部門のオーナーシップと要件定義能力》
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実行プロセス
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- 《IT資産の分析・評価》
- 《IT資産の仕分けとプランニング》
- 《刷新後のITシステム:変化への追従力》
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まず、DXレポートの2「 DXの推進に関する現状と課題 」は以下の図で概観できる。
2-1:DXを活用する経営戦略がない。
2-2:既存システムがDX推進の足かせ
2-3:業務の見直しに対する反対勢力を押しきれない
2-4:ユーザ企業からベンダー企業への丸投げ
2-5:受託事業を中心とした 情報サービス産業のビジネス・モデル
はこのままでよいのか?
最後の2-6として「2025年の壁」が述べられている。
複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムが残存した場合・・・
経済損失は、2025年以降、最大12兆円/年(現在の約3倍)にのぼる可能性がある。
一方で、こうも書かれている。
【DXシナリオ】2025年までの間に、複雑化・ブラックボックス化した既存システムについて、廃棄や塩漬けにするもの等を仕分けしながら、必要なものについて刷新しつつ、DXを実現することにより、2030年実質GDP130兆円超の押上げを実現。
つまりレガシーな既存システムを温存した場合と、DXを実現した場合の差は、-60兆円(12兆円/年 x 5年)vs + GDP 130兆円というわけである(マイナスは主にITサイドであり、プラスはDXから生まれるビジネス価値なので単純に足し算はできない)。
この巨大な市場を誰が無視することができよう。いや皮肉を言う前に明確なことがある。レガシーシステムが今後5年間で仮にゼロになっとしても、その間に30兆円(60兆の半分)は経費が使われるということになる。さらに今後作られていくシステムも、作ったそばから陳腐化する。これはDXレポートでも指摘されている。しかし、ITシステムだけが問題なのだろうか。
次回は、企業の資産とはITシステムなのかDataなのかという点を議論したい。https://dama.data-gene.com/index.php/category/dx/
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