新型コロナウイルスとオープンデータ

今回のコロナ禍の中、オープンデータの活用が目を引く機会が増えてきているように思われます。(下図<東洋経済オンライン>は、皆さんも良くご覧になっているのではないでしょうか。)そこで、オープンデータの現況について調べてみました。

私が、オープンデータを知った契機は、某ソリューション会社にてデータの利活用状況について動向調査をしていた時でした。米国のDATA.GOVを覗いたところ、そこに、当時(2013年)のオバマ大統領のメッセージとして「参加型の民主主義をより一層推進するためにこのサイトを立ち上げた~云々」といった内容が高らかに謳われており、妙に感心したことを覚えています。

日本では、2011年の東日本大震災発生時に、それまで電子政府の取組みを進めていたにもかかわらず、緊急事態に即応する行政のデータがなかなか提供できない中、Google/Twitter社による携帯電話やSNS等からのいわゆるビッグデータ活用した取組みが大きな話題を呼びました。

その後、公共データ等を集約して二次利用可能な形に整備して提供できるような体制が求められ、2012年に「電子行政オープンデータ戦略」が策定され、推進されてきました。 それから大分時が経過しましたが、日本のオープンデータの現状は、どうでしょうか?

The Open Data Barometer ホームページより

WWW財団による、Open Data Barometer によると、2018年の世界の上位は、上の表のようになっています。
日本はニュージーランドと並んで6位にランクされています。
意外(?)とも思えますが、実際の状況はどうでしょうか。

1.政府の状況

当初、データ公開中心の取組みであった「オープンデータ1.0」から、2016年には、データの利活用を前提とした「課題解決型のオープンデータ」の実現を目指す「オープンデータ2.0」にステップアップし進められてきました。(政府の取組みについての詳細は、「オープンデータへの取組み」参照。)

「オープンデータ2.0」構想のもと、2017年5月には、「オープンデータ基本指針」が策定されました。オープンデータの意義や定義とともに、行政手続きや情報システムの企画・設計段階からオープンデータ・バイ・デザインの考え方を取り入れることを前提として、基本ルールが以下のように定められています。

行政保有のデータは公開を原則とし、二次利用も積極的に促進すること、公開環境として容易に検索・利用できるウェブサイトを利用すること、データの形式はWWWの創設者Tim Berbers-Lee が提唱した「5つ星」の指標を参考にする、オープンデータのメタ情報をデータカタログサイト「DATA.GO.JP」に登録し、公開することなど。 また、公開・活用を促す仕組みとして、官民でデータの公開・活用の在り方を対話する「オープンデータ官民ラウンドテーブル」が2018年1月から開催されています。

2.地方自治体の状況

政府のみならず、2016年の「官民データ活用推進基本法」により、都道府県での推進計画策定が義務付けられたこともあり、また「オープン&ビッグデータ活用・地方創生推進機構」等の活動にもより、一応全都道府県でサイトが立ち上げられています(左図のように全都道府県にサイトが設置)。

市町村では、推進計画の策定は努力義務にとどまっていますが、鯖江市横浜市などがいち早くポータルサイトを立ち上げました。
2020年までに地方公共団体のオープンデータ取組率を100%にすることを目標としていましたが、2019年9月17日現在で37%(652/1,788自治体)に留まっています。

3.民間との連携

様々な事業体や地方自治体の利活用事例やアクティビティは、「オープンデータ100」として、政府CIOポータルに掲載されています。(2020年5月現在、事例64、アクティビティ6)

こうした取組みを推進していくために、シビックテック(Civic Tech=市民+テクノロジー)という、市民自身がテクノロジーを活用して社会や地域の課題解決を目指す、一種の運動が進められています。Code for JapanやCode for XX(XXは事業者や自治体等の名称)という活動により、行政・市民・企業の三者による地域づくりへの試みが各地にて行われています。

より詳しく知りたい方は下記をご覧ください。
地方におけるオープンデータの取組状況について」(2019.10.16)内閣官房情報通信技術総合戦略室
オープンデータを活用したアプリケーション等に関する調査研究報告書」(2019.06.21)

4.新型コロナウイルス対策とオープンデータ

今回の新型コロナ対策として、東京都でいち早く(3月3日)「新型コロナウイルス感染症対策サイト」(下図)がシビックテックによりオープンソースとして立ち上げられ、その後全国80サイトに波及しているそうです。

内閣官房IT総合戦略室、総務省、経産省は3月9日、新型コロナウイルス感染症対策にまつわるテレワークやeラーニングなどの支援サービスを無償/期間限定で提供する情報をまとめたWebサイト「#民間支援情報ナビ/VS COVID-19」を公開しました。企業やシビックテック各団体と連携し、オープンデータを活用した情報検索サイトが構築され、各種支援サービスの検索が可能となっています。

また、緊急事態宣言発令にあたって、病床数不足が挙げられていましたが、全国の病床の使用率を一覧化したダッシュボードも公開されています。これも鯖江市のシビックテック Code for Sabaeの福野泰介さんらにより開発されています。
行政側で公開されているデータは、まだまだPDF等の機械に判読不能の「一つ星」データですが、これをより機械判読性を高めたデータ形式で公開できるよう促すべく、シビックテックの有志が協同して「オープンデータ項目定義書」を作成したりという動きも出てきています。

これに関する総務省の資料は下記を参照してください。
新型コロナウイルス感染症対策サイトのためのデータ公開について(2020.03.21)

5.所感

上記のように、新型コロナウイルス問題をきっかけとして、オープンデータに関しても様々な試みが行われています。日本各地で民間と連携して色々な取組みが行われていることを知り、その進展に期待を持ちたいと思いました。ただし、取組み事態は結構なのですが、今回顕わになってきたのは、ITインフラに関する様々な脆弱性です。
 いちいち上げると情けなくなってくるのでそれは止めますが、根本的には、データ利活用の仕組みや考え方が根付いていないことが大きな原因の一つのように思われます。昨今DX(Digital Transformation)が叫ばれていますが、個人的には、デジタルインフラの大きな中心の一つはデータインフラであり、ITに係る全ての関係者にデータリテラシーが求められているのではないかと思っています。
 今こそ、ラジカルにデータマネジメントを熟慮し実現していかなければならない時代だと痛感されます。

以上

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