低品質データのロスは国家予算を超える!?

データ量は年間20億バイト!

DMBOKではいくつか数字の事例を用いて事象を説明することがある。つい読み流してしまうが、極端な例もある。

DMBOK第1版では、「1.1 データ:エンタープライズ資産」に以下の記述がある。
「カリフォルニア大学バークレー校の研究者達は、世界では毎年10億バイトから20億バイトのデータが生成されていると試算されており、情報の海で溺れそうになることも珍しくない」
20億か、大変だ〜。と一瞬思うが20億バイトは2GBである。これなら世界で1年ではなく、私のPCで1日に生成することもある量である。ネット検索して出典*1を見つけたが、そこにも同じ記述があったので、DAMAのミスではなさそうだ。それにしても 20億バイトは何かの勘違いか?
なお、出典*2によるとDMBOK 第1版が発売された2009年の世界のデータ量は800Exaバイトとあり桁が11個も違う。また出典*3のように2025年には、175Zettaバイトという予想もあるようだ。

低品質データの損失は300兆円以上!

DMBOK第2版の第1章の「2.5.3データ品質」には以下の記述がある。
「IBMは米国において低品質データのために費やしたコストは2016年で3.1兆ドルであったと推定している」
それは大きな損失だなあ〜。と一瞬思うが3.1兆ドルは300兆円以上である。300兆円と言えば国家予算並みではないかと思い、その2016年の国家予算(歳入)を調べてみた。出典*4によると
1位 米国 5.7兆ドル
2位 中国 3.2兆ドル
3位 日本 1.7兆ドル
とのことだ。米国の低品質データの損失は国家予算の半分以上! IBMも随分極端な推定をしたものだ、と思いながら一応調べてみたところ、IBMはとあるコンサルティングファームの推定(出典*5)を引用して、好んでこの値を使っているだけで、IBM自身で推定したものではないようだ。いずれにせよ 3.1兆ドルというのはちょっと大げさではないだろうか?
もっとも、低品質データの損失を正確に見積もることは、相当困難であろう。多くの論文等(出典*6)で「低品質データの損失により、収益の10%以上を失う可能性がある (Redman 2001)」というのを引用しているが、私としてはこちらの方がまだ納得できる気がする。

すいません、データ管理と直接関係のない話題となってしまいましたが、DMBOKも注意深く読んでみると色んな発見があるものだということがわかった、ということで今回はお許しください。

出典1
https://www.coursehero.com/file/p1bd5g3/Data-needs-to-be-thoughtfully-managed-because-it-controls-the-entire-life-of/

出典2
https://www.researchgate.net/figure/Global-growth-trend-of-data-volume-2006-2020-based-on-The-digital-universe-in-2020_fig1_274233315

出典3
https://www.forbes.com/sites/tomcoughlin/2018/11/27/175-zettabytes-by-2025/#62fb86165459

出典4
https://4knn.tv/government-budgets-by-country/

出典5
https://www.edq.com/blog/data-quality-failures-cost-us-3tn-a-year/

出典6
https://www.researchgate.net/publication/281269036_Classifying_costs_and_effects_of_poor_Data_Quality_-_examples_and_discussion など多数

コメント

  1. 一倉 より:

    特別給付金の申請アプリでは、ほとんどデータ品質が保証されないために大きな損失(自治体の事務作業、給付遅れによる経済損失)を招いてます。国家予算を超えるかどうかは別として大きなロスを招いているのは確かでしょう。

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